東京栄養士薬膳研究会アーカイブ [ 会員専用 ] 

2017.03

栄養学と中医薬膳学を併用した栄養相談を!



          東京栄養士薬膳研究会 
          代表 海老原 英子

 先日、薬膳教室で使用する食材を買いに北千住にある店に行きました。その日の朝、そばの実をとり上げたテレビ番組があり、常にあった在庫があっという間に売り切れてしまったということでした。以前にもテレビ番組で食物の持つ効能が取り上げられると、その反響で店頭から特定の食品が消えたという事が多々あったことを思い出しました。食品や栄養に対する豊富な知識があっても、この情報の氾濫する社会では見失なってしまう場合が多くあるように感じられます。

 食物は健やかに生きるために必要不可欠なものです。しかしながら1つの食品だけですべてを補うことはできません。栄養学では成長や生命維持に必要な栄養素は45~50種類もあり、バランスよく摂取することが健康への最低条件になり、不足でもとり過ぎても健康障害がおこると考えられています。
 食生活は人体の生命活動を保持するためばかりでなく、より豊かな生活ができるような健康維持と増進のためのものでもあります。従って食事は体をつくり体力を増強し、免疫力のアップとともに精神を養うものでなければなりません。そのためには日常の食事で多種多様な食品を適量食べることが大切になってきます。

 薬膳といえば「薬食同源」という言葉に代表されます。生薬(天然の薬物)には、薬能、薬性、薬味といった効能、性質、味があり、食物にも同様に食能、食性、食味があります。食は人類誕生からその生命を維持するために不可欠のものでありました。薬は長い年月をかけて日常食べている食物の中から病気に対する効能を見つけ出してきたのではないかと考えられます。
中国最古の薬物書である『神農本草経』(BC246~220)では、365種類の生薬を上・中・下の3品に分類しています。上品は毒がないので長期の連用が可能で、食品的要素の強いものであり、薬膳によく使用されているものです。中品は毒の有無を知って適宜用い、下品は毒が多いので長期連用はできません。中品、下品も体調不良や病気治療のために上手く使用することで効果が期待できます。
 中国最古の医学書『黄帝内経』(BC475~221)には人体の生理・病理・治療・予防などについて記載されています。「凡そ病気を判断しようとするときには、必ず飲食について質問しなさい」と書いてあり、食事と病気の因果関係を述べています。また「薬は病気を退けるもので、食物は病気を随えて治すものです」と述べ、「五穀は養い、五果は助け、五畜は益し、五菜は満し、気味(気は食性で寒涼平温熱、味は食味で酸・苦・甘・辛・鹹・淡)を合わせて服用すると精を補い、気を益す」と飲食配膳の原則をまとめています。この原則は現代栄養学ともよく一致しています。
 「医聖」と呼ばれる張仲景の著書『傷寒雑病論』(BC200~210)の中に113の方剤を創出し、第1方剤と言われる「桂枝湯」(桂枝・芍薬・甘草・生姜・棗)の記載があります。これは風寒感冒の治療方剤ですが、ほとんどが食材で構成されている方剤として知られており、また処方を書くだけでなく「薬を飲んでからしばらくして温かいお粥を食すれば薬効を高める」とその飲み方ついても詳細に書かれています。
 中国伝統医学の基礎三大古典を紹介いたしました。中医薬膳学はこの長い歴史を経てその時代を生きた人々によって完成された独特な伝統医学体系を基礎とした大変貴重な学問になっています。
                              
 東京栄養士薬膳研究会は、管理栄養士・栄養士として各分野で幅広く活躍しながら、医療分野で漢方治療が求められる中で、中西医併用の栄養教育を目指して中医薬膳学を学び研究をしている方々の団体です。15年経た今こそ、その効果が大いに期待されています。