東京栄養士薬膳研究会アーカイブ [ 会員専用 ] 

2017.9.24

第11回 健康づくり支援「特別講演会」案内
都民のための健康づくり特別講演会
~薬膳から始まる健やかライフ~


☆開催日:平成29年9月24日(日)

☆講 演:『治未病の対策~西洋医学と中医学からの
      検討~』
     ①「血糖・血圧の変動を考慮した質の高い
       血糖・血圧管理」
     ②「瘀血に対して薬膳の対応」

☆講 師:①片山 茂裕氏 
      埼玉医科大学 名誉教授 博士
             埼玉医科大学
             かわごえクリニック 院長
     ②辰巳 洋氏  本草薬膳学院 学院長
             医学博士

☆参加費:無料

第11回 健康づくり支援「特別講演会」報告
  
「人生を健康に生きる」をテーマに、都民の健康づくり支援を目的として毎年9月に特別講演会を開催しています。29年度が開催されました。

 秋の爽やかな当日、定員一杯の参加者をお迎えし、海老原代表の「特別講演会も11回を重ね、多数の皆さまをお迎えし学んでいただけること感謝いたします(要旨)」の挨拶があり講演会が始まりました。  講演1は片山 茂裕先生( 埼玉医科大学 名誉教授 医学博士 埼玉医科大学かわごえクリニック 院長)が「血糖・血圧の変動を考慮した質の高い血糖・血圧管理」と題して最新の情報を分かり易くお話しされ会場からの質問にも丁寧に説明下さいました。  講演2は辰巳 洋先生( 本草薬膳学院 学院長  医学博士)が「瘀血に対する薬膳の対応」と題して中医学の理論をやさしく理解しやすい説明と料理例を豊富に紹介下さいました。

             

 ご参加いただきました皆さまには当会作成「季節の薬膳カレンダー2018年」をお持ち帰りいただきました。日々の食事にご活用いただければ幸いです。

第11回 東京栄養士薬膳研究会特別講演会 「都民の健康づくり運動」報告

講演要旨 ①治未病の対策 西洋医学からの検討
     テーマ:「血糖・血圧の変動を考慮した
          質の高い血糖・血圧管理」
     講 師:片山 茂裕 氏 
         (埼玉医科大学名誉教授・医学博士)


・日本人は血糖値を下げるインスリンの分泌能力が欧米人に比べて低いので、食べ過ぎると血糖が高く
 なりやすく少しでも太るとインスリンの作用が効きにくくなるという特徴をもっている。

・血糖値は、日内や季節間、受診間で変動する。

  

・日内変動は、血糖の自己測定で簡単に分かるようになった。測定のタイミングは空腹時、食前、食後
 1~2時間、寝る前、低血糖時、体調を崩した時など。
   
・持続血糖モニター(CGM)でも日内変動をみることができる。皮下に針を埋め込んで間質液中のグル
 コース濃度を一定の間隔で3日間連続して測る。最新の持続血糖モニター(CGM)では14日間連続
 で測れ、リーダーでスキャンするとグルコース濃度が表示される。

・受診間変動では、受診ごとに測る血糖値(HbA1c)のばらつきの変動が大きいほど、大血管障害(心
 筋梗塞や脳卒中)、最小血管障害(網膜症や腎症)、死亡数が多くなる。

・血糖の変動と血管内皮細胞の損傷の関係を調べるため、血管内皮細胞をブドウ糖濃度が違う培養液に
 入れる研究では、高血糖にずっと入れた細胞は死滅するが、血糖が正常と高いを繰り返し変動した方
 が(高血糖に入っていた時間は短くても)より多くの細胞が死滅することが分かった。

・高血糖だけでなく、低血糖を起こさない事も大事である。低血糖があると血液の凝固因子が促進して
 固まりやすく、いろんな炎症が起き、血管内皮細胞に損傷がおき、さらに血糖をあげようと交感神経
 系を緊張させ血圧を上げたり、不整脈を起こして突然死をおこすこともある。

☆糖尿病のまとめ・・・血糖の変動が少ないことが、質の良い血糖コントロールである

   

・高血圧者数は糖尿病患者数よりはるかに多く、日本では推定4300万人。

・血圧も変動する。

  

・糖尿病での研究では、早朝高血圧だと合併症のリスクが高い。診察室で測る血圧が正常でも、家庭血
 圧で早朝に高い方は、腎症、網膜症、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血がとても多くなる。

・夜はリラックスして収縮期血圧が昼間より10~20%下がる(Dipper)のが普通だが、夜も収縮期血
 圧があまり下がらない夜間高血圧の方(Non-Dipper)がいる。

・夜間高血圧の方は、高血圧性臓器障害の進行、交感神経系の亢進、食塩感受性の高まり(少し塩を食
 べただけで血圧上昇)がみられる。肥満、糖尿病、腎機能の悪い方は夜間高血圧になりやすい。

・朝、目覚めると急に血圧が高くなる早朝上昇型(サージ型)や夜間から朝にかけてずっと血圧が高い
 夜間持続型(Non-Dipper)の方は脳心血管病が多い。

・血圧の自己測定、家庭血圧の測定のすすめ→変動をみるため、正しい測り方をマスターしよう。
 誤差が少ない腕で測るタイプで測定し、2回測り2回とも記録する。

・診察室で測る高血圧よりも家庭で測る高血圧の方が、脳心血管病の発症と関連性が高いため、高血圧
 の診断をする時、診察室で測った血圧と家庭で測った血圧が異なる場合、家庭の数値を優先するよう
 になった。

・診察室血圧が高くて家庭血圧が正常なら白衣高血圧であるが本当の高血圧ではない。診察室血圧と家
 庭血圧が両方高ければ高血圧、診察室血圧が正常で家庭血圧が高ければ仮

・受診間変動では、受診ごとの血圧のばらつきの変動が大きい方ほど心血管死亡率が高い。

・家庭血圧の日々変動が大きいと認知症発症リスクも大きくなる。(久山町研究)

・血管性認知症とアルツハイマー病を合わせた全認知症の発症のリスクは、家庭血圧の日々測定値の変
 動が一番少ない群に比べ、変動が一番大きい群は2.27倍、血管性認知症は2.79倍、アルツハイマー
 病は2.22倍になった。高血圧の方は血管性認知症のリスクも高い。

☆血圧のまとめ・・・家庭血圧を測り、日内変動、早朝高血圧、夜間高血圧(Non-Dipper)、仮面高
 血圧、季節間変動(寒冷期に上昇)に注意しよう。


第11回 東京栄養士薬膳研究会特別講演会 「都民の健康づくり運動」報告

講演要旨② 治未病の対策 中医学からの検討
      テーマ:「血瘀証に対する薬膳の対応」
      講 師:辰巳 洋 氏
          (本草薬膳学院学院長・医学博士)



・血瘀証の概念は、①血瘀(けつお)…血流が遅れる状態と②瘀血(おけつ)…血流が遅れて固まりに
 なること。

・中医学では血流と関わる臓腑と働きは、心-血脈を司る、脾-統血を司る、肝-蔵血と疏泄を司る、
 肺-百脈の集まるところと考える。

・血は心気の働きにより流れているので、血瘀・瘀血による病気は心に影響する→心脈瘀阻証など。

・中医学では気と血は一緒に流れ(気血同行)、気が血を連れて流れていると考えるので、気が滞るこ
 とで血流が停滞する→気滞血瘀証、肝気鬱結証など。気が不足すると血流が遅れて停滞する→心気虚
 証、肺気虚証など。

・血量が多くなると心に負担をかけ、働きが失調して血流が遅れる→心血瘀阻証など。血量が少なくな
 ると血が濃くなり、流れが遅れて溜まりやすくなる→血虚血瘀証、陰虚血瘀証など。

・血の質(血糖やコレステロールなどの成分)が多くなると血が濃くなり、血流が遅れる→痰濁阻脈証
 など。血の質が少なくなると血が薄くなり、臓腑が栄養不足になり働きが低下し気や血の不足になり、
 血流が遅れる→血虚血瘀証など。

・血瘀証の特徴的な症状は、①疼痛(痛み)②腫塊(かたまり)③紫紺(青紫になる)④出血の4つ。

・血瘀証に対応する食薬として、まず血流が悪いのを改善するため活血作用のある食薬を使う。気の巡
 りを良くする行気作用のある食薬も使う。症状に合わせて補気類、養陰類、養血類、滲湿利尿類、化
 痰消食類を選んで使う。
                                    
・活血作用のある食材のチンゲン菜や茄子、蓮根は身体を冷やす作用(寒・涼性)があるので熱の症状
 には向くが、血流を良くするには身体を温めたいので、料理での工夫が必要→辛味の葱や生姜、唐辛
 子などといっしょに加熱する(茹でる、炒める、煮る)と良い。

・姜黄(ターメリック)、鬱金(うこん)、紅花、蔵紅花(サフラン)は活血薬だが、姜黄(ターメリ
 ック)と紅花は温性、鬱金と蔵紅花(サフラン)は寒性である。寒性の薬は暑がり、のぼせ、イライ
 ラなどに良いので、症状によって使い分ける。日本で鬱金といわれている物は黄色く、姜黄(ターメ
 リック)なので注意する。

・血瘀証に対する薬膳の考え方

 
☆年を取ると血瘀証を発症することが多くなるが、食材を上手に使うと予防することもできる。薬膳で
 健やかライフを送ろう。

                                       (記:名取陽子)