東京栄養士薬膳研究会  [ 会員専用 ] 



 秋が深まり今は紅葉の美しい季節です。立冬を過ぎると本格的に冬へ向かいます。今年は、コロナ禍の収束も見られず、インフルエンザも心配な季節となります。
 冬は「陰気旺盛」、日照時間が短く一年中で最も寒い季節で乾燥もみられます。冬の寒さは自然界の邪気「寒邪」となって身体に侵入し、かぜ、関節の冷え・痛み、四肢の冷えなどのさまざまな不調を引き起こす原因にもなります。また、万物が冬眠状態に入り、私たちの身体も自然界の影響を受けて休養の時期に入ります。活発な活動でエネルギーを消耗することは避け、「蓄える」ことを第一にゆっくり過ごす時期と考えましょう。
 『黄帝内経』に「冬傷於寒、春必温病」とあり、冬に「寒さ」の傷害を受けると、春に病気を引き起こすと。冬を元気に過ごし、元気に春を迎えるためには「寒さ」に加え冬の臓の「腎」に対応することが大切になります。

天人相応に視る冬の養生
                  

中医学理論
 中医学では人と自然界との間の密接な関係を重視しています。人は自然界の中で生活しており、季節や気候など外部的環境の変化にあわせて自身の生命リズムを調整し、外界の変化に適応させています。また身体を構成する各組織は互いに密接な関係を維持しています。この「天人相応」の視点から冬の養生について考えてみます。
 冬の3カ月は立冬から始まって小雪・大雪・冬至・小寒・大寒までの6つの節気があります。自然界は秋の終わりの霜降を経て徐々に冬へ向かいます。
 立冬から日ごとに陰気が上昇していき、寒く、貯蔵する時期になります。草木は枯れ、動物たちは冬眠をはじめます。人間も「天人合一」に従って身体の陰陽が「陰盛陽衰」となり陰長が一層進みます。身体は陽気が阻滞され、冷え、痛み、しもやけなどの症状が現れます。また、気血の流れも悪くなり、関節や筋肉のこわばり、高血圧、心臓・脳血管疾患などの発病率が高まります。乾燥した空気の影響で口・鼻の乾燥、のどの痒み・疼痛・渇き、皮膚の乾燥などが現れます。冬の気「北風」も身体を傷めます。
 冬の臓「腎」の働きが最も盛んになります。全身の陰陽の源で、骨・脳と関連し、水を司っているため、寒さで陽気が損なわれると骨・関節の痛み、冷え、こわばり、頻尿などの症状が多く出ます。

   

冬の薬膳


病因と症状
1.寒邪:冬の外因邪気
冬の主気は寒。寒が非常に強く、人体の適応力を超えたりまたは人体の抵抗力が低いと病気の原因~寒邪となります。寒邪は陽気を傷つけ、腎、脾胃に影響し、悪寒、発熱、頭痛、四肢の冷え・しびれ、風寒型の風邪、神経痛、肌荒れ、下半身のむくみ、しもやけ、腹痛、お腹の冷え・痛み、下痢、軟便などが発生しやすくなります。

2.腎:冬の臓
冬は五臓の「腎」に属し、腎の機能が活発になります。生命を維持するエネルギー源「精」を蓄えている器官で、腎の働きが充実していれば生命力も強く、元気に冬を乗り切れると考えます。
 腎は、寒さの影響を受けると、腎の陽気が不足し、腰の冷えや腰痛、腰膝の無力感、四肢の冷え、こわばり、頻尿、排尿困難、めまい、耳鳴りなどの症状が現れます。また、寒気・乾燥の冬の邪気の特性で肺に影響し、秋に引き続き咳嗽・喀痰・喘息・胸痛が現れます。

冬の薬膳対策(薬膳処方)・・・補腎益精
 冬は身体を養うには最も良い季節です。「秋冬養陰」といわれるように、腎陽を温補し、腎陰を
滋養します。
1. 温陽補腎:腎陽を補い体を温める。
 「水」に属する腎を温めることで、精気を貯蔵する働き、吸気を収める
 働き、水を司る働きが良くなります。
 ◎温性・熱性で辛味・甘味・鹹味の食材、中薬を使います。

2. 滋陰補腎:腎陰を補い精気を養なう。
 精気は1年を通して(春~肝血・夏~津液、血・秋~津液)
 多く消耗されています。そのため、腎を滋養することが重要になります。
 ◎平性・涼性で甘味・酸味・鹹味の食材、中薬を使います。

薬膳対策
薬膳対策 食  薬 中  薬
温裏去寒:全身や局所の冷えや寒さを除く働き にら、唐辛子、黒砂糖 肉桂、乾姜など
補  気:各器官の生理機能を促進し、体力を
      増強する働き
米、はと麦、芋類、大豆、
南瓜、人参、魚介類、肉類
朝鮮人参、黄耆、大棗、党参
補  陽:エネルギー代謝を促進する働き くるみ、羊肉、海老 杜仲、冬虫夏草
補  血:各組織、器官に栄養を与え、生理活動
      を維持する、造血機能を促進する働き
ほうれん草、人参、
黒胡麻、いか、レバー、
肉類、卵
熟地黄、当帰、竜眼肉、
枸杞子
⑤補  陰:体の陰液を補い、臓腑を滋潤し、全身
      に栄養を与えるなどの働き
小松菜、豆腐、百合根、
魚類、貝類、豚肉、乳製品

麦門冬、玉竹、女貞子、
石斛

健  脾:消化吸収を促進する働き。
      消化力の低下などに効果がある
とうもろこし、芋類、
南瓜、とまと、りんご、
貝柱
茯苓、白朮、大棗、
山薬、蓮子
理  気:気の機能の停滞、
      気の滞りを取り除く働き
そば、みかん、ジャスミン 玫瑰花、陳皮
注:寒涼性で苦味の食材は摂りすぎない。苦瓜、チシャ、アロエ、菊花、緑茶、銀杏、緑豆など

冬の養生アドバイス

1.
中国には「冬令進補、開春打虎」という言葉があります。冬、冬眠状態の時期は、元気の素を蓄える時期であり、この期間に滋養強壮すると、新春には虎に打ち勝つほどのスタミナが蓄えられるということです。補気・補陽・補血・補陰などの食薬を勧めます。

2. 睡眠時間を長めにとる。早く寝て遅く起きる、太陽が昇ってから起きると良い。

3. 子供・女性・高齢者は特に保温をする。「頭」「背中」「足」の3ケ所を基本に 温める。食材は温性・熱性、温裏去寒の食材、生姜、にら、唐辛子、肉桂などを摂りましょう。

4. 適度な運動も取り入れ、体質を強く、抵抗力を高めること。

5. 中国には「天寒、暖身、先暖心」という言葉があります。寒いときは、まず心から温めるということです。激しい感情をコントロールし、ストレスを解消し精神の安定をはかり、過ごしましょう。

              記:清水紀子(調布教室・研究教室)
              参考資料:「実用中医薬膳学」東洋学術出版社
                   「標準中医内科学」東洋学術出版社

※これまでの代表のご挨拶・コメントは「アーカイブ」に収録されています。

     


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