東京栄養士薬膳研究会  [ 会員専用 ] 




猛暑の夏でしたが、会員の皆様はいかがお過ごしでしたか。日ごろからの薬膳養生による体調管理が功を奏し、無事に厳しい暑さの時期を乗り越えられたこととお察しいたします。
実は8月5日に開催された舌診の研修会に於いて、高橋楊子先生が参加者全員に行われた舌診の結果は、「気虚」「血虚」「瘀血」の人が多く見られました。舌は「内臓の鏡」と言われるので、猛暑の影響が表れたものと考えられます。

今年の異常気象は普段健康な人でも年齢、体調不良、生活環境などさまざまな要因で暑邪が体内に入り込み、多量の汗は体内の「水分」と「気」を消耗させ、ほてり、だるさ、食欲減退などの夏バテ症状を経験した夏でした。また脱水により血液の粘度も増し血流が悪くなるため、「心」は全身に営養や潤いを与えられず、特に脳に十分な血液を送れない状態になり、そのため動悸、息切れ、倦怠感、目眩、頭痛、イライラなどの熱中症の症状が起き易くなります。
夏は「清熱解暑・生津止渇」の食材、そば、茄子、胡瓜、トマト、セロリ、緑豆、豆腐、豚肉などを選択します。もう一つ、高温多湿の夏は湿邪の影響による「脾胃」の機能低下は食欲不振や吐き気、下痢などの症状が起こりやすく営養が十分摂取できず、気・血・津液の生成にも影響を及ぼし夏バテや熱中症が引き起こしやすくなります。
脾には「喜燥悪湿」という特徴があるので、「行気利湿」や「芳香化湿」の食材、葱、生姜、茗荷、柑橘類などを使って体内に溜まった湿を取り除き脾胃の運化機能を改善します。
中医学には「未病先防」という予防医学の考え方があり、冬場の病気を未然に防ぐ養生法として夏に陽を補う、「春夏養陽」があります。陰の勢力が強くなる冬場の病気を未然に防ぐため補陽が必要ということです。



高校球児たちの夏の甲子園大会が終わる頃になると、厳しかった暑さも盛りを過ぎて、秋の気配が感じられます。「陽極まれば陰生ず」のことば通り猛暑を越えると陰が徐々に増してきます。身体も「陽消陰長」になっていき冬を越える準備期間となり秋の養生が必要になります。
秋は乾燥の時期で、初秋は夏の残暑があり「温燥」、晩秋は冬の寒気があり「涼燥」に分けられます。「肺」は滋潤を好み乾燥を嫌う特徴があり、健康な人の肺は陰液(血液・体液)によって潤され、呼吸や防衛の働きを果たしています。
気候風土と病気は密接な関係があり、秋の乾燥(燥邪)の影響を受け「肺燥」になるとから咳、喉の渇き、皮膚の乾燥などの症状が現れます。薬膳処方は「滋陰潤肺」の作用をもつ、牛乳、鶏卵、百合根、蓮根、梨など積極的に選びます。



冬は「陰気旺盛」、日照時間が短く一番寒くて乾燥しています。「陰極まれば陽生ず」という言葉もあり、陰と陽の転換点に当たる冬至は、新たな陽が芽生え、生長を始める時期でもあります。体内では「腎」の働きが活発となって精華物質(営養物質)を貯蔵し、各臓器を営養します。「秋冬養陰」といわれ寒い時期に陰(営養)をしっかり養っておくと、陽が強くなる春から夏の病気を予防できるという養生法です。
冬の間は腎陰を滋養する百合根、白木耳、牛乳、鶏卵、貝類、胡麻などを使います。また腎陽を温補する胡桃、海老、なまこ、羊肉、ねぎ、生姜などを用いる食養生法があります。
古典『金匱要略』(約2000年前)の中に当帰生姜羊肉湯という処方があり、身体を温め
る作用の強い生姜と羊肉に、補血薬の当帰を組み合わせた処方で、虚弱タイプの人の体力増強、下腹部に冷えや痛みのある婦人病に効果があります。



中医学では「天人相応」の視点から自然と人間との調和を第一として考えています。春は、自然界は「陰消陽長」により、陽気が次第に強くなり新緑が出て花々が咲き、動物も目覚め活動を始めます。私たちの身体も温かい春風を感じると体内の陽気が強くなり、のびやかな精神活動が求められる時期です。
特に「肝」の生理機能が活発となります。陽気が上昇し易い人は肝が興奮し易くなり、睡眠や精神・情緒の不安定などの症状が出やすくなります。従ってストレスをコントロールしてメンタルヘルスに努めることが春の養生法はなります。
薬膳処方としては、気の流れを調節し、肝機能を正常にし、消化を促進する「疏肝理気」「補気健脾」の作用のある穀類、芋類、魚介類、春菊、セロリ、柑橘類などの食材を使います。緑茶だけでなく菊花や薄荷、桑葉などのお茶もお勧めします。
唐時代(618~907)、薬王と尊敬された孫思邈は「安身之本、必資于食」、これは身体の安全・生存の基本は薬ではなく食にあると教えています。
薬膳の基本は治未病です。日常の食事は季節や体調を考慮しながら食材を選択し 美しく、美味しい料理作りを楽しみましょう。

※これまでの代表のご挨拶・コメントは「アーカイブ」に収録されています。

     
s